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2026年8月13日、お盆のさなかの昼頃。広島県福山市の鞆の浦へ車を走らせ、沼名前神社(ぬなくまじんじゃ)を訪ねました。

空は曇りから少しずつ晴れへ。真夏の昼どきでしたが、思っていたほどの暑さはなく、落ち着いて境内を歩くことができました。

一の鳥居から二の鳥居、随身門、そして石段の先に構える拝殿へ。旧国幣小社ということもあって、とても立派な神社でした。参拝のあとは御朱印も書いていただきました。

この記事では、実際に参拝して感じたことを軸に、沼名前神社の由緒や見どころ、御朱印、アクセスをまとめています。

この記事の要点

  • 沼名前神社は広島県福山市鞆町に鎮座する式内社で、旧社格は国幣小社、現在は神社本庁の別表神社です
  • ご祭神は海の神様・大綿津見命(おおわたつみのみこと)と、須佐之男命(すさのおのみこと)です
  • 見どころは、鳥衾(とりぶすま)がのった二の鳥居(県重要文化財)、豊臣秀吉ゆかりの能舞台(国重要文化財)、力石など
  • 御朱印は直書きでいただけ、「國幣」の文字が入った印が押されます
  • 神社に駐車場はないため、車の場合は近隣の有料駐車場を利用しましょう

沼名前神社とは?読み方・ご祭神・ご利益

読み方は「ぬなくま」、通称は「鞆の祇園さん」

初めて見ると、なかなか読めない社名ですよね。「沼名前」と書いて「ぬなくま」と読みます。

かつて「鞆祇園宮(ともぎおんぐう)」と呼ばれていた歴史があり、地元では今も「祇園さん」「おぎょんさん」の愛称で親しまれています。

ご祭神は大綿津見命と須佐之男命

主祭神は、海の神様である大綿津見命です。もともとは渡守(わたす)神社に祀られていた神様でした。相殿には、鞆祇園宮の神様だった須佐之男命が祀られています。

江戸時代までは鞆祇園宮が中心で、渡守神社はその境内社という関係でした。明治4年(1871年)に社名を沼名前神社と改めて国幣小社に列し、その後、延喜式に載る「沼名前神社」は渡守神社のことだとされ、明治9年(1876年)に大綿津見命が本殿へ遷されて、現在の形になっています。

いただけるご神徳としては、次のようなものが伝えられています。

  • 海上安全
  • 漁業繁栄
  • 家内安全
  • 病気平癒
  • 学業成就
  • 安産

港町・鞆の浦らしく、海にまつわるご利益が並ぶのが印象的です。

式内社・旧国幣小社という格式

沼名前神社は、平安時代の「延喜式」神名帳に名前が記された式内社です。戦前の近代社格制度では国幣小社に列せられ、現在は神社本庁の別表神社に位置づけられています。

細い路地が入り組む鞆の町の中で、参道から社殿までがゆったりと続く沼名前神社。実際に歩いてみると、その格式の高さにふさわしい、立派な神社だと感じました。

神功皇后と霊石の伝承

沼名前神社の始まりは、神話の時代にまでさかのぼります。

伝承によると、仲哀天皇2年、神功皇后が西国へ向かう途中にこの浦へ船を寄せた際、海の中から湧き出た霊石を神璽として綿津見命を祀り、航海の安全を祈ったのが創祀とされています。

一方の鞆祇園宮は、もとは鞆の関町に鎮座していましたが、慶長4年(1599年)の火災で焼失し、現在の地に遷ったと伝えられています。

古くから潮待ちの港として栄えた鞆の浦。その海を守る神様と、疫病除けの祇園の神様が、ひとつの社でともに祀られているのが沼名前神社です。

境内の見どころ(参道から順番に)

町家に寄り添う一の鳥居

参拝の始まりは、町なかに立つ一の鳥居から。すぐ脇の町家の手すりに突き当たるように建っていて、暮らしと神社の距離の近さを感じさせる光景です。

この参道は戦前まで「鞆銀座」と呼ばれ、大いににぎわっていたそうです。

鳥衾がのった二の鳥居(広島県重要文化財)

沼名前神社でぜひ見ておきたいのが、二の鳥居です。

形は一般的な明神鳥居ですが、笠木の両端が丸みを帯びて反り上がり、その上に「鳥衾(とりぶすま)」と呼ばれる部材がのっています。ほかではまず見かけない、独特な姿の石鳥居です。

細身の石柱で、高さは4.5m。柱の刻銘から、福山藩主・水野家二代の勝重が、長男・勝貞の無病息災を願って寄進したものとわかっています。広島県の重要文化財にも指定されています。

随身門と石段、そして拝殿へ

二の鳥居の先には随身門。門をくぐると、拝殿へと続く石段が待っています。

石段を一段ずつ上がっていくと、正面に大きな拝殿が近づいてきます。旧国幣小社の名にふさわしい、堂々とした構えの社殿です。

社殿は東向きに建っていて、拝殿の前で振り返ると、鞆の浦の海が見えます。海の神様を祀る神社が、港と海を見守るように建っていることがよくわかる眺めでした。

秀吉ゆかりの能舞台(国重要文化財)

境内でもうひとつ見逃せないのが、国の重要文化財に指定されている能舞台です。

もとは伏見城にあった組立式の能舞台で、豊臣秀吉が愛用したと伝えられています。福山藩初代藩主の水野勝成が福山に移し、万治年間(1658〜1661年)に水野氏が神社へ寄進して、現在のような固定式になりました。

持ち運びのできる組立式の能舞台として国内に残る唯一のもので、随所に組立式の様式が残る、桃山時代の初期能舞台の特徴を伝えています。1953年に国の重要文化財に指定され、日本遺産「鞆の浦」の構成文化財にもなっています。

2025年5月には、長い年月で見えにくくなっていた鏡板の絵が復原され、除幕式が行われました。調査では狩野派の描き方との共通点が多く見つかり、松と竹が同じ面に描かれた珍しい構図が特徴とのことです。

力石と境内社(渡守神社・八幡神社)

社殿の脇の広場には、境内社や力石が並んでいます。

力石は全部で20個あり、いずれも花崗岩製。重さは118kgから230kgにもなります。海運の町・鞆では、祭礼の場で港の仲仕たちがこの石を持ち上げて力を競い、奉納したといわれています。福山市の指定文化財です。

広場には、大綿津見命がもともと祀られていた渡守神社や、2月の「お弓神事」の舞台となる八幡神社も鎮座しています。拝殿でお参りしたあとは、こちらにも足を運んでみてください。

沼名前神社の御朱印

参拝のあと、社務所で御朱印を書いていただきました。

いただいた御朱印を見てまず目に留まったのが、「國幣」の文字が入った印です。戦前の官国幣社の中には、印に社格を入れていたところが少なくありませんでしたが、戦後はそのほとんどが使われなくなりました。沼名前神社は、旧官国幣社としては珍しく、社格の入った印を今も使い続けている神社として知られています。

旧国幣小社としての歴史が一枚の御朱印にそのまま残っていると思うと、ありがたみもひとしおです。

夏の昼に参拝して感じたこと

8月の昼どきの参拝でしたが、この日は曇りから晴れへと移り変わる空模様で、そこまで暑くありませんでした。おかげで、参道から境内の奥まで無理なく歩いて回れました。

お盆の時期でしたが、境内で見かけた参拝者は数組ほど。混雑することもなく、鳥居や能舞台、力石、境内社まで、自分のペースで見て回ることができました。

鞆の浦の町並みは路地が多くコンパクトですが、沼名前神社はその中で一段と大きく、格式を感じさせる存在です。由緒、建築、石造物、御朱印と、どこを切り取っても見応えがあり、「さすが旧国幣小社」と思わずにはいられない参拝になりました。

基本情報・アクセス

項目内容
名称沼名前神社(ぬなくまじんじゃ)
別称鞆祇園宮、祇園さん、おぎょんさん
所在地広島県福山市鞆町後地1225
ご祭神大綿津見命、須佐之男命
社格式内社、旧国幣小社、別表神社
時間の目安9:00〜16:00(福山市の案内による)
休日なし
拝観料無料
電話084-982-2050
アクセス(バス)JR福山駅南口から鞆鉄バス鞆線で約30分、「鞆の浦」下車、徒歩約10分
アクセス(車)山陽自動車道 福山東IC・福山西ICからそれぞれ約45分
駐車場なし(近隣の有料駐車場を利用)

主な祭事

祭事時期
お弓神事2月第2日曜日
例祭5月2日
茅の輪くぐり6月末日
お手火神事7月第2日曜日の前夜

お手火神事は、火の粉を浴びながら行われる勇壮な火祭りとして知られています。

よくある質問

沼名前神社の読み方は?

「ぬなくまじんじゃ」と読みます。地元では「祇園さん」「おぎょんさん」とも呼ばれています。

沼名前神社のご利益は?

海上安全、漁業繁栄、家内安全、病気平癒、学業成就、安産などのご神徳が伝えられています。

御朱印はいただけますか?

いただけます。今回は直書きでいただき、「國幣」の文字が入った印が押されていました。初穂料や受付時間は、事前に神社へ確認しておくと安心です。

駐車場はありますか?

神社としての駐車場はありません。車で行く場合は、鞆の浦周辺の有料駐車場を利用しましょう。

能舞台はどんなところが貴重なの?

豊臣秀吉ゆかりと伝わる組立式の能舞台で、持ち運びのできる組立式として国内に残る唯一のものとされています。国の重要文化財で、2025年には鏡板の絵も復原されました。

まとめ

鞆の浦の町なかに鎮座する沼名前神社は、式内社であり旧国幣小社という格式をもつ、とても立派な神社でした。

鳥衾がのる珍しい二の鳥居、秀吉ゆかりの能舞台、港の力自慢たちの力石、そして社殿の前から見える鞆の浦の海。歴史と海の気配が重なり合う境内は、鞆の浦を訪れたらぜひ立ち寄ってほしい場所です。

「國幣」の印が入った御朱印も、この神社ならではの記念になります。鞆の浦めぐりの際は、ぜひ「祇園さん」にも手を合わせてみてください。

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