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清川あさみ・名和晃平の共作《PixCell-Our New World》全景

はじめに

2026年11月3日、文化の日。原宿のseeen Harajukuで名和晃平さんの個展「At Random」を見たあと、そのまま銀座へ向かいました。ポーラ銀座ビルに着いたのは18時ごろ。すっかり日が暮れた銀座の通りに、1階のショーウィンドウの白い庭が明るく浮かんでいました。

POLA GINZAのショーウィンドウに広がる清川あさみと名和晃平の白い庭

目的は、美術家の清川あさみさんと彫刻家の名和晃平さんによる二人展「Invisible Garden」です。お二人はご夫婦で、二人展は今回が初めて。名和さんの個展と夫婦の二人展を同じ日にはしごする、ぜいたくな一日になりました。

会場は、原宿よりも少し年齢層が上がった印象でしたが、とても賑わっていました。そして見終えていちばんに思ったのは、夫婦での展示がこんなにも素敵で、素晴らしいものなのか、ということです。

この記事でわかること

  • 「Invisible Garden」の会期(12月27日まで延長)・料金・アクセス
  • 全幅約9mの共作《PixCell-Our New World》の見どころ
  • 1階POLA GINZAに広がる白い庭と《PixCell-Deer#72 (Aurora)》
  • 夫婦の二人展だからこそ感じた、世界観の調和

名和晃平「At Random」seeen Harajuku体験レポート

清川あさみ|名和晃平「Invisible Garden」とは?

「Invisible Garden」は、清川あさみさんの著書『みえないにわ – Invisible Garden』(世界文化社、2026年)の刊行をきっかけに構想された二人展です。情報が絶えず流れ、現実と仮想、自然と人工の境界があいまいになった今。滴や胞子、微生物、動植物、人の記憶や時間、夢や想像力といった、形のあるものもないものも息づく風景を「にわ」として描き出しています。

清川あさみ|名和晃平「Invisible Garden」のポスター
項目内容
展覧会名清川あさみ|名和晃平「Invisible Garden」
会期2026年9月16日(水)〜12月27日(日)※当初の11月8日から延長
開館時間11:00〜19:00(入場は18:30まで)※11月6日〜8日は10:00開館、12月19日は17:00閉館
休館日12月16日(水)
料金無料
会場ポーラ ミュージアム アネックス(ポーラ銀座ビル3階)、同ビル1階 POLA GINZA
住所東京都中央区銀座1-7-7
アクセス東京メトロ有楽町線 銀座一丁目駅7番出口から徒歩1分、JR有楽町駅から徒歩5分、東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線 銀座駅A9出口から徒歩6分
主催株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
協力ASAMI inc.、Sandwich Inc.

刺繍の清川あさみ、セルの名和晃平

清川あさみさんは1979年、兵庫県淡路島生まれ。東京を拠点に活動する美術家です。写真や雑誌、布、書物に刺繍を施す表現を出発点に、「見えないものを可視化すること」をテーマに制作しています。名和晃平さんは1975年大阪府生まれ、京都を拠点に活動する彫刻家で、セル(細胞・粒)という考え方を軸に、ものの表面を透明な球体で覆う「PixCell」シリーズなどで知られています。

糸で物語を紡ぐ清川さんと、セルでイメージを変換する名和さん。方法はまったく違いますが、どちらも「世界の見え方」を問い続けてきたアーティストです。

内覧会で清川さんは、結婚から10年がたち「いまだったら何か一緒にできるかもしれない」と感じたことが今回につながったと話しています。名和さんも、家族として暮らす中で映画や作品について批評し合ってきたこと、互いをアーティストとして尊敬していることを語っています(美術手帖の報道より)。

3F|全幅9mの共作《PixCell-Our New World》

エレベーターで3階に上がると、白を基調にした展示室が広がります。長い壁いっぱいに展示されていたのが、本展の中心となる共作《PixCell-Our New World》(2026年)です。全幅は約9m。今回、いちばん心に残った作品です。

ポーラ ミュージアム アネックス3階「Invisible Garden」の入口

清川あさみ・名和晃平の共作《PixCell-Our New World》全景

ベースになっているのは清川さんの《Our New World》。箱根の自然風景や、生成AIで生み出したイメージを組み合わせて、ひとつの風景をつくり上げたものです。その表面全体を、名和さんの大小の透明なセルが覆っています。清川さんはこの作品について、「現代の神話」を残したいという思いから生まれたと語っています。

セルのひとつひとつはレンズのように働き、近づくと後ろのイメージを拡大したり歪めたりし、離れると再び大きなひとつの風景に戻ると紹介されています。アップで撮った写真を見返すと、青や赤、オレンジの粒が光を受けてきらめき、宝石を敷き詰めたような表情をしていました。

《PixCell-Our New World》を覆う透明なセルのアップ

この作品でいちばん強く感じたのは、清川さんの画面と名和さんのセルが一体になっていることです。清川さんの作品に名和さんが手を加えた、というより、はじめからひとつの作品として生まれたように見えました。

呼応し合う、それぞれの作品

展示室には、お二人それぞれの作品も並んでいます。名和さんの「PixCell」の近年の展開である《PixCell-Random》(2026年)や、写真やデジタルイメージの上に刺繍で別の時間を重ねる清川さんの「Serendipity」シリーズなどの新作です。

名和晃平の「PixCell-Random」シリーズの作品

清川あさみの「Serendipity」シリーズの作品

スポットライトに浮かぶ青い水面のような画面、無数の蝶が舞うコラージュ、細い線で鹿や植物が描かれた白い庭の絵、開いた本を収めた小さな額。別々の作家の作品なのに、色合いも雰囲気も呼応していて、ひとつの庭の中を歩いているようでした。

「Invisible Garden」3階に展示された青い水面のような作品

「Invisible Garden」3階に展示された蝶のコラージュ作品

「Invisible Garden」3階に展示された鹿や植物を描いた白い庭の作品

「Invisible Garden」3階に展示された風景の作品と本の作品

18時を過ぎても展示室には人が多く、作品の前で立ち止まる人や、ベンチに座って共作をじっくり眺める人の姿がありました。

来場者で賑わう「Invisible Garden」3階の展示室

1F|POLA GINZAに広がる白い庭

3階を見たあとは1階へ。化粧品の店舗POLA GINZAの中にも、もうひとつの「にわ」が広がっています。ここも今回、特に印象に残った場所です。

中央にあるのは、お二人の新作インスタレーション《White Garden | PixCell-B.A》(2026年)。白い台の上に、白い花や葉、滴のような形の白いオブジェが群れ、ところどころに色とりどりの模様が入った葉が混じります。その中に堂々と立つのが、名和さんの《PixCell-Deer#72 (Aurora)》(2022年)。全身を大小のガラスの球体に覆われた鹿です。

清川あさみ・名和晃平《White Garden | PixCell-B.A》の白い植物

名和晃平《PixCell-Deer#72 (Aurora)》と白い庭

見上げた《PixCell-Deer#72 (Aurora)》

頭上には白い網のようなアーチが重なり、空間全体が白い森のようになっていました。名和さんは、妹島和世さんが手がけたPOLA GINZAの空間との関係も意識し、「エレベーターが開くところから作品が始まる」と考えて隅々までつくったと話しています。

《PixCell-Deer#72 (Aurora)》と白いアーチ

《PixCell-Deer#72 (Aurora)》のガラスの球体のアップ

ここでは、白い植物と鹿が、同じひとつの庭に見えました。清川さんの植物と名和さんの鹿。別々の手から生まれたものなのに、もともとこの庭に暮らしていた生きもののように並んでいます。

《White Garden | PixCell-B.A》の白い植物とPixCellの小品

《White Garden | PixCell-B.A》の白い滴のようなオブジェ

棚に並ぶ、小さな「にわ」

壁の棚には、清川さんがファウンドオブジェ(見つけた既製品)を使った《Bio Active Garden (Ginza)》(2026年)が点在しています。白い砂に小石を置いたガラスの球、子鹿のぬいぐるみ、スニーカーに乗った宇宙飛行士、黒電話から伸びる白い植物。透明な箱の中で像が揺らいで見える作品や、黒くきらめく素材に覆われたラジカセも、同じ棚に自然に並んでいます。

POLA GINZAの棚に並ぶ《Bio Active Garden (Ginza)》

白い砂に小石を置いたガラスの球

棚に並ぶ子鹿のぬいぐるみと黒い柱

子鹿のぬいぐるみのアップ

スニーカーに乗った宇宙飛行士

ぬいぐるみと刺繍のような植物

花柄のアンスリウムとカップ

透明な箱の中の天使像

石と透明な箱の作品

黒くきらめく素材に覆われたラジカセ

ここは化粧品の店舗なので、棚の下の段にはポーラの製品も並んでいます。ポーラの最高峰ブランド「B.A」とお二人のコラボレーション「PixCell B.A」も、この空間で展開されています。

1階の奥には、人の足元が写った青い画面の作品もありました。外からは、ガラス越しに白い庭がよく見えます。銀座の通りを歩く人にも開かれた展示です。

POLA GINZA 1階の奥に展示された作品

夫婦の二人展だからこそ生まれた調和

この記事でいちばん伝えたいのは、ここです。夫婦での展示が、とても素敵で素晴らしいものでした。世界観が同じというか、とてもよく調和しているというか。会場を回りながら、そう感じました。

  • 共作《PixCell-Our New World》では、清川さんの画面と名和さんのセルが一体になっていた
  • 1階では、白い植物と鹿が同じひとつの庭に見えた
  • 3階の単独作どうしも、色や雰囲気が呼応していた
  • 会場全体が白で統一され、二人の作品をひとつの空間にまとめていた

刺繍とセル。方法はまったく違うのに、ぶつかり合うことなく、ひとつの「にわ」をつくっています。10年ともに暮らし、作品について語り合ってきたお二人だからこその調和なのかもしれません。

数時間前に原宿で名和さんの個展を見たばかりだったので、名和さんひとりの空間と、清川さんと二人でつくる庭を、同じ日に体験できたことになります。

行く前に知っておきたいこと(Q&A)

会期はいつまで?

当初は11月8日までの予定でしたが、好評につき12月27日(日)まで延長されています。入場は無料です。休館日は12月16日(水)のみで、12月19日(土)は17時に閉館します。

何時までに行けばいい?

開館は19時までで、入場は18時30分までです。私は18時ごろに着いて、30〜45分ほどで3階と1階を見て回りました。夕方から行く場合は、入場の締め切りに気をつけてください。

混み具合は?

祝日の18時ごろで、とても賑わっていました。同じ日に行った原宿のseeen Harajukuと比べると、来場者の年齢層は少し上がった印象です。

見逃しやすい場所はある?

1階のPOLA GINZAと、地下のサロンです。地下のサロンにも名和さんの新作が2点展示されているそうですが、私は地下があることを知らず、見逃してしまいました。Tokyo Art Beatの来場者コメントにも、1階の店舗の作品を見逃さないように、という声がありました。3階を見たら、1階と地下にも足を運んでみてください。

原宿のseeen Harajukuと一緒に回れる?

回れます。私は16時ごろにseeen Harajukuの「At Random」を見て、18時ごろに銀座へ移動しました。seeen Harajukuは18時、ポーラ ミュージアム アネックスは19時に閉まるので、原宿を先に回るのがおすすめです。名和さんの個展と夫婦の二人展を、一日でたっぷり味わえます。

まとめ|夫婦でつくる、ひとつの「みえないにわ」

清川あさみさんと名和晃平さんによる初の二人展「Invisible Garden」。全幅約9mの共作《PixCell-Our New World》と、1階の白い庭と鹿。どこを歩いても、二人の世界観がひとつに溶け合っていました。夫婦の展示ならではの素敵さに満ちた二人展です。

会期は12月27日まで延長され、しかも無料です。銀座に行く機会があれば、3階、1階、そして地下まで、庭を散策するように巡ってみてください。

神勝寺 禅と庭のミュージアム「洸庭」

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