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《Spark》に囲まれた《PixCell-Lesser Kudu》と《PixCell-Flamingo》の部屋

はじめに

2026年11月3日、文化の日。よく晴れた16時ごろ、原宿・神宮前の路地に入ると、黒いルーバーが波打つように連なる建物が現れました。11月1日にオープンしたばかりのアートスペース「seeen Harajuku(シーンハラジュク)」です。

黒いルーバー「Shading Drapes」に包まれたseeen Harajukuの外観と入口

こけら落としを飾るのは、彫刻家・名和晃平さんの個展「At Random」。名和さんの作品が好きで、これまで日本各地へ見に行ってきました。今回は、建物そのものも名和さんとSandwichの設計です。

中に入って驚いたのは、若い来場者の多さでした。場所柄もあると思いますが、こんなに名和さんが人気なんだと、なんだかうれしくなりました。

この記事でわかること

  • 名和晃平「At Random」の会期・料金・アクセス
  • 名和さん自身が設計に関わったseeen Harajukuの建築の見どころ
  • 1階から4階まで、全37作品の構成と印象に残った作品
  • 混み具合や所要時間など、行く前に知っておきたいこと

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名和晃平「At Random」とは?

「At Random」は、名和晃平さんが設計した建物全体、4つのフロアと階段室を使って、新作を含む37点を無料で見せる個展です。キーワードは「記憶の断片」。イメージや素材、質感が行き来しながら進む名和さんの創作は、一見ランダムなようで、有機的につながっています。その広がりを、建築の中を上下に巡る体験とあわせて見せる展示です。

seeen Harajuku入口の名和晃平「At Random」のポスター
項目内容
展覧会名名和晃平 個展「At Random」
会期2026年11月1日(日)〜11月28日(土)
開場時間12:00〜18:00
休館日会期中なし
料金無料(予約不要)
会場seeen Harajuku(東京都渋谷区神宮前6-1-7)
アクセス東京メトロ 明治神宮前〈原宿〉駅4番出口から徒歩2分、JR原宿駅東口から徒歩6分
主催M-TRUST、Bennu Global Entertainment
協力SCAI THE BATHHOUSE、Pace Gallery
展示デザイン・制作Sandwich

名和晃平さんは1975年大阪府生まれ、京都を拠点に活動する彫刻家です。Pixel(画素)とCell(細胞・粒)を組み合わせた「PixCell」という考え方を軸に、剥製や身の回りのものを透明な球体で覆う「PixCell」シリーズで広く知られています。2018年には、パリのルーヴル美術館のガラスのピラミッドに、高さ10mを超える《Throne》を展示しました。

seeen Harajukuとは?建物そのものが名和さんの作品

seeen Harajukuは、名和晃平さんと、名和さんが率いるクリエイティブ・プラットフォーム「Sandwich」が設計した、1階から4階までのアートスペースです。表参道から南に入った路地に新しく建てられました。

外観は、曲面を重ねたルーバー「Shading Drapes」。影をまとったような黒いルーバーが連なる姿は、とても素敵です。中に入ると、壁にいくつものくぼみ(アルコーブ)が並ぶ、洞窟のような空間が広がります。このくぼみも本当にいい。

曲面の壁が続くseeen Harajukuの展示室(2F)

各フロアは螺旋階段でつながっていて、上から見下ろす眺めも見どころです(後半で紹介します)。光の入れ方も暗さも、まさに完璧。全体を通して美しく、「これぞ名和さん」と言いたくなる建物で、建物自体がひとつの作品だと感じました。

フロア別の全37作品一覧

会場で配られていた作品リストをもとに、フロアごとに整理しました(番号は作品リストの番号です)。37点のうち26点が2026年制作で、新作もたっぷり見られます。

フロア作品
1F1.《Throne (p_pyramid)》、2.《Dune#69》、3.《PixCell-TV/Fox (Fushimi)》、4.《PixCell-Flamingo》、5.《PixCell-Lesser Kudu》、6〜11.《Spark#2》《Spark#6》《Spark#3》《Spark#4》《Spark#1》《Spark#7》、12.《PixCell-Boombox#3》
螺旋階段13.《Ether (Eye)》(サウンドスケープ:原摩利彦《Memoria and Variation》)
2F14〜16.《Plotter#34》《Plotter#32》《Plotter#35》、17〜22.《PixCell-Memorandum》シリーズ6点(無印、#2、#3、#4、#5、#7)
3F23.《Biomatrix#1》、24.《Biomatrix#2》
4F25.《Lens [Eastern Rosella]》、26.《Prism [Ceramic Dog]》、27.《PixCell[Toy-Stealth#1]》、28.《PixCell-Shoe#19 (R)》、29.《PixCell-Camera#5》、30.《PixCell-Mickey Mouse#6》、31.《PixCell-Toy-Dandelion Clock/Sandwich》、32.《PixCell-Painting (unknown)#2》、33.《PixCell-Toy-Astronaut》、34〜37.《Prism [Butterflies/Maltese]》《Prism [Butterflies/Pomeranian]》《Prism [Butterflies/Papillon]》《Prism [Butterflies/Yorkshire Terrier]》

1F|《Throne》と念願の《PixCell-Flamingo》、日本初公開の《Spark》

AIの時代の玉座《Throne (p_pyramid)》

入口のポスターにも使われている作品です。白いアルコーブの中で、銀色に輝く玉座が光を浴びていました。「Throne」シリーズは、AIという新しい知性の到来をあらわした作品と紹介されています。ルーヴル美術館で展示された《Throne》は、各地の山車や神輿のリサーチから生まれた「空位の玉座」でした。

白いアルコーブに置かれた名和晃平《Throne (p_pyramid)》

《Dune#69》と、テレビやラジカセのPixCell

《Dune#69》(2020年)は、傾けた面に水と絵具を流してつくる「Dune」シリーズのペインティングです。黒と白がうねる画面は、地球を空から見下ろした風景のようにも見えます。

名和晃平《Dune#69》

《PixCell-TV/Fox (Fushimi)》と《Dune#69》が並ぶ1Fの展示室

同じ空間には、ブラウン管テレビの上にキツネが座る《PixCell-TV/Fox (Fushimi)》(2026年)と、ラジカセを透明な球体で覆った《PixCell-Boombox#3》(2025年)。球体の一つひとつがレンズになり、見る角度によって中のものが歪んだり大きく見えたりします。

ブラウン管テレビの上にキツネが座る名和晃平《PixCell-TV/Fox (Fushimi)》

透明な球体に覆われたキツネ、《PixCell-TV/Fox (Fushimi)》

ラジカセを透明な球体で覆った名和晃平《PixCell-Boombox#3》

日本初公開の《Spark》と《PixCell-Lesser Kudu》

奥の部屋では、黒い線が四方八方へ飛び出す《Spark》6点が、空間を取り囲んでいます。カーボンファイバーの棒にベルベットをまとわせた作品で、2023年に韓国のPace Gallery ソウルで初めて発表されたシリーズです。名和さんは、世界を満たす細胞のなかで生と死の衝動がくり返されることで現実に生じる「ほつれ」として、この作品を語っています。

《Spark》に囲まれた《PixCell-Lesser Kudu》と《PixCell-Flamingo》の部屋

その中央に立つのが、新作《PixCell-Lesser Kudu》(2026年)です。らせん状の角を持つレッサークーズーの全身が、大小の透明な球体に覆われています。黒い《Spark》の中で、ライトを浴びた球体がきらきらと光っていました。

黒い《Spark》の中に立つ名和晃平《PixCell-Lesser Kudu》

《PixCell-Lesser Kudu》の頭部と球体

上から見た《PixCell-Lesser Kudu》と《Spark》

立川で見逃した《PixCell-Flamingo》に、やっと会えた

同じ部屋の白い台の上には、《PixCell-Flamingo》(2023年)。2025年に立川のPLAY! MUSEUMで開かれた「どうぶつ展」に出ていた作品です。そのときは見に行けなかったので、今回ようやく実物に会えて本当によかったです。ピンクから赤のグラデーションの球体に覆われたフラミンゴが、白い壁に大きな影を落としていました。

白い台の上の名和晃平《PixCell-Flamingo》

ピンクから赤の球体に覆われた《PixCell-Flamingo》

《PixCell-Flamingo》と《PixCell-Lesser Kudu》、《Spark》の展示風景

螺旋階段|天窓へ伸びる《Ether (Eye)》と原摩利彦さんの音

螺旋階段の中央には、天窓に向かって伸びる新作《Ether (Eye)》(2026年)。「Ether」は、粘りけの強い液体が落ちて床に当たるまでの滴の形を3Dモデリングし、上下に反転させながら積み重ねた彫刻のシリーズです。重力と、それに逆らう力が釣り合ったような、宙に浮く感覚をつくり出しています。

天窓へ伸びる《Ether (Eye)》と螺旋階段

この作品には、京都の作曲家・原摩利彦さんによるサウンドスケープ《Memoria and Variation》(9分30秒、8.4ch)が付いています。シンギングベル、サヌカイト、貝殻、ピアノ、ノイズで構成された音で、階段を上り下りしながら、この音にも気づきました。

4階のいちばん上から見下ろすと、白い螺旋の中心を《Ether (Eye)》が貫き、階段が下へ下へと続いていきます。すごくいい空間でした。

4階から見下ろしたseeen Harajukuの螺旋階段

2F|新作《PixCell-Memorandum》、見る位置で都市が入れ替わる

2階は、本展のテーマ「記憶の断片」がいちばんはっきり表れているフロアです。新作《PixCell-Memorandum》は、名和さんが国内外の都市で撮った写真を細かく分け、画素のように組み合わせた画面を、無数のセルで覆った平面作品です。大きいものは横2m以上あります。

実際に近づいたり離れたり、横に動いたりすると、画面に浮かぶ像がはっきり変わりました。見る位置によって写真の断片が姿を変え、ひとつの画面からさまざまな都市の記憶が浮かび上がる作品です。

名和晃平《PixCell-Memorandum#3》と《PixCell-Memorandum#2》

青い画面の名和晃平《PixCell-Memorandum》

アルコーブに展示された《PixCell-Memorandum》シリーズ

無数のセルに覆われた《PixCell-Memorandum》シリーズ

隣の部屋には《Plotter》が3点。名和さんが自作したプロッターという描画機械にボールペンを取り付け、図面のデータから線を描いたシリーズです。機械の不完全さから生まれる誤差をあえて受け入れることで、一見均一な画面に揺らぎが生まれます。外壁のルーバーと呼応する作品としても紹介されています。

名和晃平《Plotter》3点が並ぶ展示室

3F|泡が湧き続ける《Biomatrix》

今回、特に心に残ったのが3階の《Biomatrix》です。シリコーンオイルの液面から泡が次々と湧き、グリッド状の細胞のような模様をつくり出すシリーズで、本展ではボックス型に組み立てられ、それぞれが独立した彫刻になっています。

暗い部屋の中で、光を受けた液面にひし形の格子が並び、そのあちこちから泡がぷくっと盛り上がります。シリコーンオイルは粘りけが強いため、泡がゆっくりと動くのもこのシリーズの特徴です。正方形に近い《Biomatrix#1》と、長さ2.4mの《Biomatrix#2》の2点が、それぞれの部屋に置かれていました。

液面に泡が湧く名和晃平《Biomatrix》

ひし形のグリッドが並ぶ名和晃平《Biomatrix》

《Biomatrix》の液面と泡

《Biomatrix》の液面に盛り上がる泡

4F|おもちゃのPixCellと《Prism》《Lens》

4階は、身近なものをモチーフにした作品が並ぶフロアです。壁の棚には、スニーカーの《PixCell-Shoe#19 (R)》、青いカメラの《PixCell-Camera#5》、木の鳥かごに入った《PixCell-Mickey Mouse#6》、サンドイッチから綿毛のタンポポが伸びる《PixCell-Toy-Dandelion Clock/Sandwich》。アルコーブの中には宇宙飛行士の《PixCell-Toy-Astronaut》、壁には額縁ごと球体に覆われた風景画《PixCell-Painting (unknown)#2》がありました。

4Fの棚に並ぶPixCellシリーズの作品

スニーカーを球体で覆った名和晃平《PixCell-Shoe#19 (R)》

青いカメラの名和晃平《PixCell-Camera#5》

木の鳥かごに入った名和晃平《PixCell-Mickey Mouse#6》

サンドイッチから綿毛のタンポポが伸びる《PixCell-Toy-Dandelion Clock/Sandwich》

宇宙飛行士の名和晃平《PixCell-Toy-Astronaut》

アルコーブに展示された《PixCell-Toy-Astronaut》

額縁ごと球体に覆われた名和晃平《PixCell-Painting (unknown)#2》

「Prism」は、ものを入れた透明な箱をプリズムシートで覆ったシリーズです。見る位置が変わると中の像が現れたり消えたりして、そこにあるはずのものが、ぼんやりした虚像のように感じられます。陶器の犬が入った《Prism [Ceramic Dog]》や、蝶と犬種の名前を組み合わせた4点の《Prism [Butterflies/…]》が並びます。

透明な箱に入った陶器の犬、名和晃平《Prism [Ceramic Dog]》

壁に並ぶ名和晃平《Prism [Butterflies/…]》4点

透明なケースの中で、黒い台にとまる赤いインコ(ナナクサインコ)が光の筋に包まれていたのが、《Lens [Eastern Rosella]》です。

透明なケースの中の赤いインコ、名和晃平《Lens [Eastern Rosella]》

行く前に知っておきたいこと(Q&A)

料金や予約は必要?

入場は無料で、予約もいりません。開場は12時から18時で、会期中の休館日はありません。

所要時間はどのくらい?

私は45分ほどで1階から4階まで回りました。4フロアに37点とボリュームがあるので、ゆっくり見るなら1時間ほどあると安心です。

混み具合は?

祝日の16時ごろで、入場の待ち時間はありませんでした。ただ、各フロアに常に10人弱はいて、写真を撮る人も多いため、人気の作品の前では少し待つこともありました。来場者は若い人が多い印象です。

アクセスは?

東京メトロ 明治神宮前〈原宿〉駅4番出口から徒歩2分、JR原宿駅東口から徒歩6分です。表参道から南に入った路地にあり、黒いルーバーの外観が目印です。

まとめ|建物まで含めて「これぞ名和さん」

名和さんの作品はこれまで各地で見てきましたが、今回は建物自体にも名和さんが関わっているので、全体を通してとても美しく、まさに「これぞ名和さん」という空間でした。外観のルーバーから、洞窟のようなくぼみ、螺旋階段の光と暗さまで、全体がひとつの作品のようです。

見逃していた《PixCell-Flamingo》にようやく会えて、新作の《PixCell-Memorandum》や《Biomatrix》も見られて、ボリューム満点の展示でした。会期は11月28日まで、しかも無料です。原宿・表参道に行く機会があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。

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