新宿の夜が「光のアートパーク」になった夜|TOKYO LIGHTS 2026 体験記
2026年5月24日、18時30分。新宿中央公園に着いたとき、空はまだ淡い水色を残していました。日中の熱がゆっくり引いていく時間帯、芝生の上には小さな子どもを連れた家族や、カメラを抱えた人、英語や中国語で話す旅行者たちが、思い思いに散らばっています。まだ照明は本気を出していません。けれど、それがよかったんです。だんだん夜になっていくのを待ちながら作品を眺める。この「移ろいの時間」こそ、光のアートをいちばん贅沢に味わえる入り口でした。
この記事では、新宿中央公園で開催された「光のアートパーク」の全作品を実際に鑑賞し、そのあと都庁で行われたプロジェクションマッピング国際大会まで足を運んだ一日を、写真とともにレポートします。これから行く方が「どの時間に行けばいいか」「何を見逃したくないか」を判断できるよう、体験したからこそ分かったポイントもまとめました。





TOKYO LIGHTS 2026とは?
最初に、イベントの全体像を簡単に整理しておきます。
TOKYO LIGHTS 2026は、東京の夜をクリエイティブな光で彩る光の祭典です。2026年5月23日(土)から31日(日)までの9日間、西新宿エリアを舞台に開催されました。公式アンバサダーは女優の土屋太鳳さん。会場は大きく2つに分かれていて、それぞれ性格の違う光の体験ができるのが特徴です。
2つの会場、2つの楽しみ方
ひとつが、新宿中央公園を舞台にした「光のアートパーク(Light Art Park)」。もうひとつが、都庁第一本庁舎の都民広場で行われる「1minute Projection Mapping Competition(プロジェクションマッピング国際大会)」です。
光のアートパークは、公園そのものを巨大な作品空間に変えてしまう常設展示型。自分のペースで歩いて回れます。一方のプロジェクションマッピング国際大会は、時間が決まっている上映型のイベント。世界中のクリエイターが都庁の壁面に映像作品を投影して競い合います。私はこの両方を一晩で体験しました。
どちらも入場は無料です。ただしプロジェクションマッピングの鑑賞エリアは事前申込制で、ここが大きなポイントになります(後半で詳しく書きます)。

夕暮れから夜へ、光のアートパークを歩く
新宿中央公園の「光のアートパーク」は、今回が初開催。総合演出を手がけたのは、ULTRA JAPANやSTAR ISLAND、大阪・関西万博の催事企画なども手がけてきたクリエイティブディレクターの小橋賢児さんです。コンセプトは、都市に蓄積された記憶や感情、風の流れや気配といった「見えない東京」を、光によって可視化するというもの。説明だけ聞くと抽象的ですが、実際に歩くと「ああ、こういうことか」と腑に落ちる瞬間が何度もありました。
公園内には国内外のクリエイターによる光の作品が点在しています。順路を気にせず、気になった光のほうへふらふらと吸い寄せられていく。その回遊感が心地よかったです。



日本初上陸の地球、GAIA
いちばんの目玉は、イギリスのアーティスト、ルーク・ジェラム(Luke Jerram)による「GAIA」でした。直径およそ7メートルの、巨大な地球型インスタレーションです。NASAが提供する高精細な地表データをもとに制作されていて、表面の海や雲、大陸の質感が驚くほどリアル。日本初上陸という触れ込みも納得の存在感でした。
暗くなるにつれて、宙に浮かぶ地球がぼうっと光を帯びていきます。見上げていると、自分が宇宙空間に放り出されて地球を眺めているような、不思議な浮遊感に包まれました。周りの人たちも一様に上を向いて、しばらく無言。子どもが「ちきゅうだ!」と声を上げる瞬間が、何度もありました。


計算機自然の光、落合陽一の新作
もうひとつ強く印象に残ったのが、メディアアーティストの落合陽一さんがこのイベントのために制作した新作、「リキッドユニバース:蒼氓蟲譜(そうぼうちゅうふ)」です。蛍や夜光虫、そしてLEDといった、自然と都市それぞれに存在する「光」が、高さ4メートルの光柱の中でひとつに重なり合う作品でした。
落合さんが「計算機自然」と呼ぶ世界観そのままに、コンピューターが生成し続ける映像の中で、自然の光と人工の光の境界がどんどん曖昧になっていく。見ているうちに「光って結局なんなんだろう」と考え込んでしまう、知的な余韻のある作品です。GAIAが直感に訴えてくるとすれば、こちらはじわじわ思考に効いてくる感じでした。


心に残った、そのほかの作品たち
ほかにも、個性の異なる作品が並んでいました。特に印象的だったものをいくつか挙げます。
「Visible TOWER」は、街を行き交う人々の記憶や日々の営みを「光の記憶」として刻むタワー型のインスタレーション。AIが街の記憶をコラージュした光がLEDビジョンに浮かび上がり、都市そのものが記憶を語り出すようでした。
「Embrace」は、参加型の作品。並んだ人型のシルエットと手をつなぐと、光の波紋が連鎖して広がっていきます。誰かと協力するほど演出が華やかになる仕組みで、近くにいた家族連れが手をつないで歓声を上げていたのが微笑ましかったです。
このほかにも、霜柱が天へと伸びる構造を光で表現した「Frozen Spire」、東京に生きる個性を花に見立てた「TOKYO百花繚乱」、フリーモーション刺繍のテキスタイルに光を投影し森の内部に入り込んだような感覚を生む「Fractal Forest」など、自然と都市、生命をテーマにした作品が多彩に揃っていました。公式によると展示作品は12点。歩いて回るだけで、ひとつのテーマパークを巡ったような満足感がありました。





子どもも外国人も、みんなが楽しむ公園だった
光のアートパークを歩いていて何より印象的だったのは、来場者の多様さです。
小さな子ども連れの家族がとても多く、子どもたちは作品を見つけるたびに駆け出していきます。海外からの旅行者も目立ち、いろんな言語が飛び交っていました。カメラ片手にじっくり撮影する人、ベンチに座ってぼんやり光を眺める人、走り回る子どもたち。年齢も国籍も目的もバラバラな人たちが、同じ公園で、それぞれのペースで光を楽しんでいる。
美術館のように「静かに鑑賞する」のとは違う、もっと開かれた空気がありました。公園という開かれた空間だからこそ生まれる、ゆるやかな一体感。光のアートが特別な人のものではなく、その場に居合わせた誰のものにもなっている。そんな景色そのものが、ひとつの作品のように感じられました。






都庁へ。1minute Projection Mapping Competition
光のアートパークをひと通り堪能したあと、向かったのが都庁第一本庁舎の都民広場。ここで行われるのが、TOKYO LIGHTS最大の目玉ともいえる「1minute Projection Mapping Competition」です。
1分間に懸ける、世界の才能
この大会は2012年に始まった歴史ある国際大会で、いまや世界中のクリエイターにとっての「登竜門」とされています。映像のプロから新進気鋭の若手まで、世界中の才能が集まり、プロジェクションマッピング表現を競い合う。過去の優勝者・受賞者がその後世界各地で活躍するトップクリエイターへと羽ばたいていく、まさに未来を占うステージです。
ルールはシンプルで、けれど過酷です。与えられた時間は、わずか1分から1分59秒。この限られた尺の中で、都庁の壮大な壁面をキャンバスに、各国の作家がアイデアと技術を惜しみなくぶつけてきます。テーマや表現は本当に多種多様で、ストーリー性で見せる作品、音と光の同期で圧倒する作品、建物の構造そのものを活かして変形させる作品。1分という制約があるからこそ、無駄のない密度の濃い表現が次々に投影されていきました。
第2部、20時50分の臨場感
私が参加したのは【第2部】の20時50分〜21時40分(開場20時25分)の回でした。
夜も深まり、空が完全に暗くなった都民広場。都庁の巨大な壁面に光が走った瞬間の高揚感は、写真ではなかなか伝わりません。地響きのような音響と、ビルそのものが姿を変えていくような映像のスケール感。1作品が終わるたびに、広場のあちこちから拍手が起きます。各国の作家が「1分」という同じ土俵で勝負しているからこそ、見るほうも自然と「次はどんな表現だろう」と前のめりになっていきました。とても良い体験だった、と心から思える時間でした。


鑑賞エリアは事前申込が必須
ここが、これから行く方にいちばん伝えたいポイントです。
プロジェクションマッピングの鑑賞エリアは、本当に多くの来場者で埋まります。鑑賞エリアでしっかり見るには事前申込が必要で、申込なしでは入れない状況でした。私は運良く枠を取れましたが、人気の時間帯はすぐに埋まってしまう印象です。会期も9日間と限られているので、行くと決めたら早めに申込を済ませておくのがおすすめです。
TOKYO LIGHTS 2026を楽しむためのポイント
実際に一晩歩いてみて分かった、楽しみ方のコツをまとめます。
いつ行く?おすすめの時間帯
私のおすすめは、私自身がそうしたように、空がまだ明るい夕暮れ時に着いておくことです。光のアートパークの点灯時間は19時から22時。明るいうちに公園に入り、だんだん暗くなっていく中で作品が本来の表情を見せていく過程を味わえると、満足度がぐっと上がります。明るい時間と暗い時間で印象がガラリと変わる作品も多いので、「移ろい」ごと楽しむのが贅沢な見方だと思います。


申込のコツと回り方
プロジェクションマッピングの鑑賞エリアは事前申込制なので、まず観たい回(部)の枠を押さえるのが最優先。そのうえで、上映までの時間に光のアートパークを回る、という流れがスムーズです。私の場合は、夕方に公園で作品をじっくり見て、夜の第2部でプロジェクションマッピングを締めくくる形になり、結果的に理想的な順番でした。
基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| イベント名 | TOKYO LIGHTS 2026 |
| 開催期間 | 2026年5月23日(土)〜31日(日) |
| 会場 | 新宿中央公園(光のアートパーク)/都庁第一本庁舎 都民広場(プロジェクションマッピング国際大会) |
| 光のアートパーク点灯時間 | 19:00〜22:00(公式情報による) |
| 入場料 | 無料 |
| 鑑賞エリア | プロジェクションマッピングは事前申込制 |
| 公式アンバサダー | 土屋太鳳 |
| 主催 | プロジェクションマッピング国際アワードTOKYO実行委員会 |
| 共催 | 東京都 |
※点灯時間・上映スケジュールは変更される場合があります。お出かけ前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
まとめ
2026年5月24日、夕暮れから夜にかけての新宿は、いつもの新宿とは別の顔を見せてくれました。新宿中央公園では、GAIAや落合陽一さんの新作をはじめとする光のアートを、子どもから旅行者までさまざまな人と一緒に楽しみ、都庁では世界中のクリエイターが1分に懸けたプロジェクションマッピングに胸を熱くする。性格の違う2つの光の体験を一晩で味わえるのが、TOKYO LIGHTSの贅沢なところです。
光のアートパークは無料で気軽に楽しめますが、プロジェクションマッピングの鑑賞エリアは事前申込が必須。行くと決めたら、早めの申込と、少し早めの到着を。そうすれば、夕暮れから夜へと移ろう光の時間を、まるごと楽しめるはずです。
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