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愛知県 一宮市 オリナス一宮

織物のまち一宮で開催される国内最大規模の国際芸術祭「あいち2022」が7月30日に開幕し、日本の現代アート界を代表する国際的アーティスト・奈良美智の作品が注目を集めています。本記事では、あいち2022の一宮市会場を訪れた際の見どころや、奈良美智の作品に込められた思いを紹介します。

織物のまちとして知られる一宮市は、名古屋市の中心から北西に向かって車や電車で30〜40分ほどの場所にあります。江戸時代に綿織物の生産が盛んだった一宮市は、絹綿交織物の生産を経て、毛織物(ウール)生産へと転換しました。現在も「織物のまち一宮」として親しまれています。

奈良美智は、愛知県立芸術大学及び大学院で学んだ愛知にゆかりのある作家です。一宮市で展示されている彼の作品《Fountain of Life》(2001/2022)では、頭部が重なり合った子供たちの眼から泉のように涙が溢れ出しています。留まることのない静かな涙は、疫病や戦争に限らず、悲しみの絶えない今日の世界で、愛と平和を願う涙のようにも感じられます。少年時代を米軍三沢基地(現在は日米共同使用の航空作戦基地)の近くで過ごした奈良美智は、世界の平和を願う姿勢を初期から多くの作品に描いてきました。

奈良美智の作品には、孤独感を漂わせながらも、大人の世界を成立させる制度や権力構造へ果敢に立ち向かう抵抗の意志が感じられます。彼が世界を見つめる眼差しには、少女や犬など小さなものの内面にある孤独、怖れ、抵抗、周縁から中心を見つめる距離感といった複雑な感情が織り交ぜられています。

一宮市の会場であるオリナス一宮は、神々へ祈りを捧げる真清田神社への参道沿いに位置しており、その歴史ある空間で奈良美智の作品が展示されています

展示作品の中でも《Miss Moonlight》(2020)の少女は、まぶたを閉じた慈愛に満ちた表情で、静かに祈りを捧げているようにも見えます。「月光の少女」を意味するタイトルどおり、彼女の髪の毛にはこの世の様々な輝きが投影され、美しい色に溢れています。

あいち2022で展示されている段ボールに描かれた近作シリーズには、反核や反戦へのメッセージが切迫感とともに込められています。

織物のまち一宮で開催されるあいち2022において、奈良美智の作品は、訪れる人々に寄り添うような静かな祈りと共に、権力への抵抗や世界の平和を願う姿勢を伝えています。美しいアート作品と織物の歴史が交差する一宮市でのあいち2022は、訪れる価値がある芸術祭です。ぜひ、この機会に一宮市を訪れ、奈良美智の作品と織物の歴史を感じてみてください。

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