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WHAT MUSEUMで開催中の「Collecting? Connecting?」展は、T2 Collectionが収集してきた現代アート作品をもとに、「アートを収集すること」と「アートが人とつながること」の関係を探る展覧会です。多様なアーティストの作品を通じて、アートがどのように人々の記憶や感覚と結びつき、新たな対話を生むのかを考えさせられる内容となっています。

本記事では、私が特に注目していた名和晃平の作品《PixCell-Camera》と《PixCell-EVA-01》を主題としつつ、展覧会全体の魅力についても触れていきます。

名和晃平の世界——PixCell-CameraとPixCell-EVA-01

今回の展覧会で、私が最も楽しみにしていたのは、名和晃平の作品でした。彼の代表的な「PixCell」シリーズから、《PixCell-Camera》と《PixCell-EVA-01》が展示されており、まさに「Collecting? Connecting?」というテーマを象徴する作品でした。

名和晃平は、日常の物体を透明な球体(セル)で覆い、まるでデジタルピクセルのような新たな表層を生み出す「PixCell」シリーズを展開しています。このシリーズでは、私たちが普段見慣れた物体が異なる視点から再解釈され、視覚情報が分断されることで、新たな感覚体験が生まれます。

PixCell-EVA-01:ポップカルチャーとアートの融合

《PixCell-EVA-01》は、日本を代表するアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のエヴァ初号機をモチーフにした作品です。PixCellの技法によって、我々がよく知るエヴァのシルエットが曖昧になり、一方でその存在感が増幅される。この視覚的な変化は、現代社会におけるイメージの流動性や記憶の断片化とも結びついているように感じました。

PixCell-Camera:時間と記憶の凝縮

《PixCell-Camera》は、ヴィンテージカメラをベースにした作品です。カメラは本来「記録し、保存する」ための道具ですが、それがPixCellの技法によって覆われることで、視覚的な情報が分断され、カメラそのものが記憶の集合体のように見えてきます。

名和晃平だけじゃない——T2 Collectionの多様な魅力

本展には、名和晃平の作品だけでなく、他のアーティストによる魅力的な作品も多数展示されています。

  • ライアン・サリバン《Blue Painting》(2019):厚く重ねられた絵の具の質感が印象的で、偶然と計算が交錯する抽象表現が特徴的でした。

  • ニール・ホッド《The Life We Leave Behind》(2022):過去の記憶や痕跡をテーマにした作品で、視覚的な深みと情緒を感じさせる一枚。

  • ベルナール・フリズ《Mora》(2014):色彩の重なりと筆の流れが独特のリズムを生み出し、視覚的な躍動感を与えていました。

  • 松山智一《Baby, It’s Cold Outside》(2017):ポップな色彩とダイナミックな構図が目を引き、ストリートカルチャーの要素を取り入れた作品。

  • バリー・マッギー《Untitled》(2013):グラフィティ文化に根ざした表現で、都市の喧騒やストリートのエネルギーを感じさせました。

  • 小林正人《Unnamed #10》(1998):絵画の物質性と時間の流れを感じさせる作品で、抽象的な筆致が印象的でした。

  • 江上越《にじいろ―Kusano Takafumi》(2021):鮮やかな色彩が交差する作品で、視覚的なリズムとエネルギーが特徴的でした。

  • 堀内正和《平面 N-A》(1962):幾何学的なフォルムがシンプルでありながらも洗練され、静かで強い存在感を放っていました。

  • 長田綾美《floating ballast》(2022):軽やかで流動的な形態が、空間との関係性を生み出していました。

こうした多様な作品が並ぶことで、「収集(Collecting)」が個々の作品の集合体であり、「つながり(Connecting)」がそれらの相互作用によって生まれることを、強く実感しました。

「Collecting? Connecting?」——アートを通じたつながり

本展のタイトル「Collecting? Connecting?」が示すように、アートにおける「収集」と「つながり」の関係性が、多角的に表現されています。名和晃平の作品は、まさにこのテーマを視覚的に体現していると言えるでしょう。

また、T2 Collectionは、個人や企業が収集した作品が持つ意味や、その集合体が新たな価値を生み出すプロセスに焦点を当てています。現代アートは、単なる美的対象ではなく、時代や文化を反映し、未来へと継承されるものでもあり

まとめ

WHAT MUSEUMで開催中の「Collecting? Connecting?」展は、現代アートが持つ「収集」と「つながり」の概念を探求する、非常に刺激的な展覧会でした。

特に名和晃平の《PixCell-Camera》と《PixCell-EVA-01》は、アートの新しい見方や、日常の物体が持つ記憶や意味を再考させる作品でした。しかし、他のアーティストたちの作品と併せて観ることで、本展が持つ「つながる」というテーマがより深く理解できたと感じます。

アートは、単なる視覚的な美しさだけでなく、我々の思考や感覚を刺激し、新たな発見をもたらしてくれるもの。今回の展覧会を通じて、私たち自身が普段何を収集し、何とつながっているのかを改めて考える機会になりました。

名和晃平の作品を主軸にしながらも、WHAT MUSEUMが持つ多層的な魅力を味わえた展覧会でした。

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