【あいち2022 塩田千春】織物のまち一宮で「あいち2022」のアートに触れる:塩田千春の作品に注目
愛知県 一宮市 ノコギリ2
国内最大規模の国際芸術祭「あいち2022」が、7月30日に開幕しました。本記事では、「織物のまち」である一宮市をピックアップして、ベルリン拠点でグローバルに活躍するアーティスト、塩田千春の作品を紹介します。
江戸時代に綿織物の生産が盛んだった一宮市は、絹綿交織物の生産を経て、毛織物(ウール)生産へと転換。現在に至るまで「織物のまち一宮」として知られる一宮市会場では、土地の産業や歴史、建築に触れた作品が多く展示されています。
特に注目すべきは、「のこぎり屋根」と呼ばれる工場をアートギャラリーとして再利用した「のこぎり二」で展示されている塩田千春の作品です。一宮市の毛糸を使い、のこぎり二に残る毛織物の機械や糸巻きの芯などと融合させた本作は、かつて労働が行われたこの地に新たな命を吹き込み、生命や記憶を想起させます。
塩田千春の新作《糸をたどって》は、赤や黒の毛糸を使ったインスタレーションが特徴的で、人と人をつなぐ運命の糸や血縁、体内の毛細血管などを連想させる作品です。のこぎり二に残る毛織物の機械や糸巻きの芯を一宮市の毛糸で繋ぎ、この場所に生きた様々な命、労働、エネルギーの記憶を蘇らせています。
塩田千春は、京都精華大学で村岡三郎に師事した後、1996年に渡独。マリーナ・アブラモヴィッチのもとで学び、東西分断の記憶を宿すベルリンを拠点に国際的に活躍しています。2001年の第1回横浜トリエンナーレ(神奈川)で注目を集め、2008年には芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。また、2015年には第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(イタリア)の日本館代表に選ばれています。
2019年には森美術館(東京)での総合的な個展「塩田千春展:魂がふるえる」(アジア太平洋地域巡回中)が開催され、350を超える展覧会や国際展に参加しています。
一宮市で開催された「あいち2022」の会場では、塩田千春の《糸をたどって》をはじめ、織物のまちの歴史や文化に根ざした多彩なアート作品が展示されています。
一宮市の「のこぎり屋根工場」は、毛織物産業を象徴する歴史的な建築物であり、現在も約2000棟が残っています。そんな一宮市の象徴である「のこぎり屋根工場」をアートの舞台に変えた「のこぎり二」で、塩田千春の《糸をたどって》とともに、織物のまち一宮の歴史と未来を感じてみてください。
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