今津景「タナ・アイル」- インドネシアの大地と水が語る壮大な物語
東京オペラシティで開催された 「タナ・アイル」 は、今津景が描くインドネシアの自然、文化、歴史をめぐる壮大な展示です。
タイトルの 「タナ・アイル」 はインドネシア語で「大地と水」を意味し、インドネシアという土地が持つ多様な文化や自然環境、
そしてそこに潜む 搾取と再生のサイクル をテーマとしています。
展示は 6つの部屋に分かれており、それぞれが異なる視点で「過去」「現在」「未来」を描き出しています。
この構成が、展示全体に一貫した物語性をもたらしていることが強く感じられました。



インドネシアとの出会いと葛藤(個人的体験と異文化の対峙)
最初の部屋では、今津景がインドネシアで初めて体験した 「異文化との対峙」 が描かれています。
- 「Anda Disini / You Are Here (2024)」 は、バンドンでのアーティストインレジデンスで制作され、「ROMUMYSA(居場所のなさ)」という感覚を描写。
- インドネシアの土地に立つ自身の存在を問いかける作品が並び、文化の違いによって引き起こされる不安や混乱が表現されています。
- 「Pithecanthropus erectus (Remake) (2019)」「Flores erectus and Leptoptilos robustus (2019)」 といった作品は、インドネシアにおける人間の起源や存在の曖昧さを象徴的に描いています。








身体と記憶の探求(災害の記憶と人間の営み)
次の部屋では、現在も続く 「シドアアルジョの泥火山災害」 に焦点を当てています。
- 「When Facing the Mud (2022)」 は、泥に覆われた土地と人々の記憶を表現し、再生と破壊が繰り返される様子を描いています。
- 「Human Study (2018)」「Women (2018)」「Repatriation (2022)」 といった作品は、社会の中で存在が脅かされる人々の姿を表現しています。
- 「Homo Floresiensis (2024)」「Leptoptilos Robustus (2024)」 などの作品は、人間の身体を象徴的に表し、自然と人間の関係性を暗示しています。











経済と環境の対立(植民地支配と資源搾取)
この部屋では、インドネシアでの 「キニーネ生産と植民地支配の歴史」 が描かれています。
- 「Bandoengsche Kinine Fabriek (2024)」 は、オランダによるキニーネの独占と自然資源の搾取を主題にした作品。
- この歴史的背景は、経済活動がいかに自然環境に悪影響を与えてきたかを示しています。
- さらに、自然の美しさとその背後にある経済的支配の構造を暗示する作品が並び、鑑賞者に問いかける形となっています。




インドネシア神話と再生の象徴(ハイヌウェレの神話)
最も多くの作品が展示されている部屋で、インドネシアの神話 「ハイヌウェレ」 に基づくテーマが中心です。
- 「Hainuwele (2023)」 は、豊穣と犠牲を象徴するインドネシア神話を表現し、搾取と再生のサイクルを暗示しています。
- 彫刻作品 「Seated Female Figure of Maluku」「Pregnant Figure」 などは、生命と豊穣を象徴するものとして展示されています。
- 神話的な視点から、インドネシアの自然や文化がどう変容していくかを示唆しています。



























環境破壊の現実(現代社会の破壊)
ここでは、インドネシアの 「チタルム川の汚染」 という現実的な問題が取り上げられています。
- 「Lost Fish (2021)」 は、工業排水とプラスチックごみによる環境破壊を描き、鑑賞者にその問題を突きつけます。
- 現代社会の経済活動によって引き起こされる破壊の象徴として、展示全体に重い影を落とす作品です。







再生の可能性と新たな道筋(未来への問いかけ)
最後の部屋では、未来への希望と再生の可能性が示唆されています。
- 「Tropical Stream (2024)」 は、一見美しい自然の風景として描かれていますが、破壊の危機を同時に示唆する表現がされています。
- 未来への希望を感じさせつつも、その脆さを意識させる構成が鑑賞者に深い余韻を与えます。



🌱 感想と総評
タナ・アイル」は、「異文化の対峙」「災害の記憶」「植民地支配」「神話的再生」「環境破壊」「未来への希望」 といったテーマが6つの部屋に分かれながらも、
一つの物語として鑑賞者に訴えかける展示でした。
それぞれの部屋が持つメッセージを鑑賞することで、今津景さんの表現する 「搾取と再生のサイクル」 がどれほど深く現代に影響を与えているかを感じさせられました。



🔶 No.1〜No.6:インドネシアとの出会いと葛藤(個人的体験と異文化の対峙)
- Anda Disini / You Are Here (2024)
- Pithecanthropus erectus (Remake) (2019)
- Flores erectus and Leptoptilos robustus (2019)
- Curiosity cabinet from Ambon (2022)
- Bandoengsche Kinine Fabriek (2024)
- Seram Green (2024)
🔶 No.7〜No.17:身体と記憶の探求(災害の記憶と人間の営み)
- Human Study (2018)
- Ana Deco (2017)
- Wasting Age (2017)
- The cosmos on your back (2022)
- Women (2018)
- Repatriation (2022)
- Decoupling (2016)
- Last Universal Common Ancestor (2021)
- Candy in Amber Room (2018)
- Homo Floresiensis (2024)
- Leptoptilos Robustus (2024)
🔶 No.18〜No.24:経済と環境の対立(植民地支配と資源搾取)
- Tear down the house and build a boat (2019)
- When Facing the Mud (Response of Shrimp Farmers in Sidoarjo) (2022)
- When Facing the Mud (2022)
- A Boy Tending His Net (2022)
- Milkfish (2022)
- Black Tiger (2022)
- Yesteryears (by Bagus Pandega) (2023)
🔶 No.25〜No.65:インドネシア神話と再生の象徴(ハイヌウェレの神話)
- Anubis (2016)
- Flowing Heart (2024)
- Ambonian Plain of Buffles (2023)
- Madua (砂糖の塊) (2023)
- WEVE (2022)
- Girl’s Waste (2023)
- Nazrul’s goblet (2022)
- SATE’s gate, Patralima & Patrawisa sculptures (2024)
- Proliferation (pelvis on green) (2021)
- Mama Wuku (2021)
- My Heart in My Hand (2023)
- Bigger (2024)
- Memories of the Land / Body (2020)
- Harvesting from the Buried Goddess Body (2022)
- My Heart in My Hand (Gray Shade) (2023)
- Your Inner Fish (2024)
- Under the mango tree (2022)
- The Donut of the Heart (2023)
- Fruits of Seram (2023)
- RGB (2021)
- Ambone Mermaid (2022)
- Pole (2023)
- Tiger in My Arm (2024)
- Waving Strata (2024)
- Lush Terrain (2023)
- Pelvis and Rhizome (2022)
- Blue Roots (2023)
- Hainuwele (2023)
- Heart (2023)
- Lungs (2024)
- Hand (2024)
- Bladder and Kidney (2024)
- Colon (2024)
- Leg (2024)
- Hand bone (2024)
- Seated Female Figure of Maluku (2024)
- Pregnant Figure (2024)
- Female Ancestor Figure of Flores (2024)
- Femur of Homo Erectus (2024)
- Hibiscus (2024)
- Skull of Homo Floresiensis (2024)
🔶 No.66〜No.67:環境破壊の現実(現代社会の破壊)
- Lost Fish (2021)
- Tropical Stream (2024)
🔶 No.68〜No.71:再生の可能性と新たな道筋(未来への問いかけ)
- Seram Green (2024)
- Teeth and Mud (2024)
- Fruits of Seram (2024)
- Eating Tulas (2024)
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