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UESHIMA MUSEUM ANNEXで開催された今津景の個展を訪れてきました。私はこれまでにも彼女の作品に魅了されてきましたが、今回は特に 「生き残る / Survivor」 という圧倒的な存在感を放つ作品が忘れられません。
この個展では、インドネシア移住前後の代表作が一堂に会し、彼女の作風がどのように進化してきたのかを目の当たりにできました。作品一つ一つが問いかけてくるテーマの重さに圧倒されつつも、その中に宿る力強さや優しさに心を打たれました。

生き残る / Survivor - 人間の欲望が生み出す悲劇

特に印象的だったのは、やはり 「生き残る / Survivor」(2019年) です。この作品は、インドネシアの豊かな自然環境に対する人間の介入が引き起こす数々の問題をテーマにしています。
キャンバスには コモドドラゴン、ヒクイドリ、オランウータン といった貴重な野生動物が描かれていますが、その傍らには 猟銃を構える人物や手榴弾 が配置されており、激しいコントラストが胸を締め付けます。
さらに、巨大なビニールシートには 荒れ果てた採掘場、爆煙、混沌とする自然と人間のシルエット が重なり合い、見ているだけで圧倒されるような空間が広がっていました。

作品全体にはグリッチやバグのような効果が施されており、まるで現実そのものが崩壊しているかのようです。
「alive」という言葉がそこに浮かぶたび、「誰が生き残るべきなのか」 という問いが突きつけられます。人間が豊かさを求めるあまり、自然環境を破壊し続けている現実を目の当たりにし、その問いが胸に刺さります。
技法や手法の観点だけでなく、「なぜこのテーマを描き続けるのか」 を考えさせられる作品でした。今津景が移住という大きな変化を経て、新たな視点を手に入れたことが強く感じられます。

初期から現在までを網羅する作品リスト

初期作品(2008年 – 2009年)

  • Blue Ribbon(2008年)

  • 光から逃れて(2008年)

  • Moment(2008年)

  • Orange Desert on Blue Sheet(2009年)

  • 探索の果てに(2009年)

中期作品(2014年 – 2019年)

  • Image of Mt. 1(2014年)

  • Untitled 7(2016年)

  • 生き残る / Survivor(2019年)

インドネシア移住数年後の作品(2022年 – 2024年)

  • Drowsiness(2022年)

  • Asyura(2022年)

  • Susu(2023年)

  • Mermaid of Banda Sea(2024年)

多面的な表現が問いかけるもの

この個展を通して強く感じたのは、「人間と自然の相克」 というテーマがいかに深く重たいものかということでした。
初期作品から見られる幾何学的で都市的な美しさから、インドネシア移住後に生まれた自然や文化への眼差しへと変わっていく過程が、とてもダイナミックに伝わってきました。
特に「生き残る / Survivor」は、その中でも群を抜いてメッセージ性が強く、自然環境が壊されていく中で人間が果たすべき責任を痛感させられるものでした。

人間が豊かになることと引き換えに失われていくもの。そのリアリティが、大きなキャンバスとインスタレーションによって圧倒的な力で迫ってきます。
ただ美しいだけでなく、その奥に潜む葛藤や苦悩が描き出されているからこそ、今津景の作品は見る者に強く訴えかけてくるのだと改めて感じました。

次は東京オペラシティで開催されていたタナ・アイルの展示について書きたいと思います。
同じ日に訪れた二つの展示は、テーマも表現手法も異なりつつも、「人間の在り方」 という共通点を持っているように感じました。
現代アートが問いかけるものに触れた一日でした。

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