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導入

2025年8月16日の夕方から翌朝にかけて、小豆島を訪れました。夏会期中の滞在は短時間ではありましたが、瀬戸内国際芸術祭の作品をいくつか巡り、深い印象を受けました。2022年には丸2日かけて島内を回った経験があるため、今回は「限られた時間で、心に響く作品を味わう」という特別な視点での訪問となりました。

会場全体の印象

小豆島は、オリーブの木々や棚田、港町の景観など自然と人の営みが色濃く残る島です。そこに現代アートが加わることで、作品は単なる展示物ではなく「島そのものの一部」として感じられます。夕刻から夜、そして翌朝という短い時間の中でも、作品が風景と溶け合いながら語りかけてくるのを確かに受け止めることができました。

各作品紹介と体験

《うみのうつわ》(長澤伸穂)

概要
2025年の新作。光ファイバーを編み込んで作られた船型のインスタレーションで、暗い空間に浮かび上がるように展示されています。内部に横たわることができ、波音と脈動する光に包まれる体験を通じて「海の器」と「生みの器」という二重の意味を表現しています。

体験・感想
実際に船の中に身を横たえた瞬間、自分の鼓動と作品の光が重なり合う感覚に包まれました。海そのものに抱かれているようで、深い安らぎを得られました。

《抱擁・小豆島》(ワン・ウェンチー)

概要
中山千枚田の近くに広がる竹のドーム状空間。約4,000本の竹で編み込まれた構造体で、床は小豆島の形をかたどっています。竹のトンネルを抜けて入ると、内部は自然光が差し込み、訪れる人を包み込む大きな空間が広がります。台湾出身の作家による恒久的な作品で、自然と人とのつながりを体感できる場となっています。

体験・感想
竹のアーチをくぐった瞬間、涼やかな風と竹の香りに包まれ、心身ともに解きほぐされました。ドームの中に腰を下ろすと、まさに「抱擁」という言葉通り、優しく守られているような感覚がありました。

《はじまりの刻》(三宅之功)

概要
高さ約3.7メートルの巨大な陶製の卵の彫刻。ひび割れの隙間から草が芽生える姿が造形され、命の誕生や希望を象徴しています。夕陽や朝日と共鳴するように設置されており、時間の移ろいと共に異なる表情を見せるのが特徴です。

体験・感想
日没の直前に訪れ、オレンジ色の光に照らされた卵のシルエットを眺めました。新たな生命の兆しと一日の終わりが重なり合い、静かに心を打たれる瞬間でした。

《太陽の贈り物》(チェ・ジョンファ)

概要
土庄港のランドマーク的存在。無数のオリーブの葉を象った金色の冠が空に輝く彫刻です。葉の一枚一枚には地元の小学生が海への思いを綴ったメッセージが刻まれています。2013年から設置されており、島の玄関口を彩る象徴的な存在となっています。夜間にはライトアップされ、日没後も訪れる人を迎えています。

体験・感想
船を降りて最初に目にしたこの作品は、まさに島の「光の門」のようでした。朝日に照らされ、金色に輝く姿を見たとき、胸の奥に温かな力を感じました。

巡って感じたこと

短い滞在でしたが、小豆島で出会った作品はいずれも「自然」「命」「つながり」といった根源的なテーマを投げかけていました。特に夕刻から夜にかけて鑑賞したことで、作品と自然が一体となり、昼間とはまた違う奥行きを感じることができました。2022年にしっかり巡った体験と重ね合わせながら、今回は「時間をかけずとも深く感じる」ことの豊かさを実感しました。

まとめ(次回予告)

2025年8月16日の夕暮れから翌朝にかけて、小豆島で過ごしたひとときは、短時間でも心に残る大切な時間となりました。作品と自然と自分が呼応し合う感覚を得られたのは、この島ならではの体験でした。翌朝には犬島へ渡り、新たなアートとの出会いが待っていました。次回は犬島篇として、その体験を綴ります。

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