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2024年の春、初めてKYOTOGRAPHIEを訪れました。

写真祭というものが京都にあることは知っていましたが、実際に巡るまでその体験の豊かさは想像できていませんでした。寺院の座敷、二条城の御殿、老舗帯屋の蔵、印刷工場の跡地。写真が「どこに置かれるか」によってこれほど変わるのか、ということを体で覚えた年でした。

この記事では、2024年に訪れた全8会場・9組のアーティストの展示を一覧でまとめています。各展示の詳細レポートへのリンクも掲載しています。

項目内容
イベント名KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024
テーマLEGACY(遺産)
開催期間2024年4月13日(土)〜5月12日(日)
会場京都市内各所
公式サイトkyotographie.jp

KYOTOGRAPHIEとは

KYOTOGRAPHIEは2013年に始まった、京都を舞台とする国際写真祭です。白い壁の展示室ではなく、京都固有の歴史的建築や場所が毎年の会場になります。写真とその場所が互いに語り合うことで、ほかでは体験できない鑑賞体験が生まれます。毎年テーマを設け、世界各国から招かれたアーティストが参加します。

2024年のテーマは「LEGACY(遺産)」。過去から受け継がれてきたものと、それをいかに現代の視点で捉え直すか。そのふたつが交差するプログラムが組まれていました。

ヴィヴィアン・サッセン「PHOSPHOR: Art & Fashion 1990-2023」|京都新聞旧印刷工場

オランダ出身の写真家ヴィヴィアン・サッセンによる、30年以上のキャリアを集大成した大規模回顧展。会場となった京都新聞旧印刷工場の地下1階は、その後2025年にJRが「クロニクル京都 2024」を展示した場所でもあります。

ファッションとアートの境界を軽々と越えてきたサッセンの作品群は、200点以上。「Lexicon」「Of Mud and Lotus」「Umbra」など代表的なシリーズが並び、アーカイブ映像インスタレーションも含む内容でした。ディオールのサポートとパリのヨーロッパ写真美術館(MEP)との共同開催という国際的な規模で、京都にいながらサッセンのキャリア全体を俯瞰できる贅沢な展示でした。

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クラウディア・アンドゥハル「影の中の光」|KYOTOGRAPHIE 2024

スイス系ブラジル人写真家クラウディア・アンドゥハルが、半世紀以上にわたって記録し続けてきたブラジル・アマゾンのヤノマミ族の写真展。1970年代にヤノマミ族と出会って以来、彼女は単なる記録者ではなく、彼らとともに生きながら撮り続けてきた写真家です。

展示された写真は、ヤノマミ族の日常と神聖な儀式、そして彼らが直面し続けてきた環境破壊や社会的な圧力を映し出しています。「Susi Korihana thëri, Catrimani」など、彼女自身の長年の関係から生まれた作品には、記録を超えた愛情と尊敬が宿っていました。異文化への深い眼差しという意味で、2024年の展示の中でも特に印象的なものでした。

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ティエリー・アルドゥアン|二条城 二の丸御殿 台所・御清所

フランスの写真家ティエリー・アルドゥアンによる、二条城 二の丸御殿「台所・御清所」を舞台にした展示。ユネスコ世界遺産でもある二条城が会場になるというだけで、この日を楽しみにしていました。

台所と御清所という、かつて実際に使われていた生活空間の中に写真が置かれることで、歴史的建築が持つ時間の重みが展示に加わります。アルドゥアンが現代的な感性で切り取った二条城の内部は、観光で訪れるときとはまったく異なる見え方をしていました。歴史ある場所と写真が共鳴し合うKYOTOGRAPHIEの魅力を、この展示でより強く感じました。

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Birdhead|誉田屋源兵衛 竹院の間・黒蔵

中国・上海を拠点とするアーティストデュオ、Birdhead(宋拓と季躍)による展示。会場となった誉田屋源兵衛は、創業240年以上を誇る京都の帯の老舗です。

竹院の間と黒蔵という、光の質も雰囲気もまったく異なるふたつの空間で、同じデュオの作品が異なる表情を見せます。竹を使った和室では柔らかな光の中に都市の日常が静かに広がり、黒蔵では重厚な闇の中にダイナミックな作品群が響き合います。老舗の空間と現代の上海をテーマにした写真の組み合わせが、意外なほど自然に溶け合っていました。

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Jaisingh Nageswaran・イランの市民と写真家たち|KYOTOGRAPHIE 2024

インド南部出身のJaisingh Nageswaranによるインドの日常写真と、イランの写真家・市民たちによる作品が並ぶ展示です。

Nageswaranの写真は、インドの街角、祭り、農村の風景を鮮やかな色彩で捉えたもの。その隣に、厳しい検閲と社会的制約の中で活動するイランの写真家たちの作品が並ぶことで、ふたつの社会の「生きること」の対比が浮かび上がってきます。それぞれの国が抱える背景は異なりますが、写真が「その場の空気」を越えて伝えてくる力を感じた展示でした。

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James Mollison・Yoriyas|京都芸術センター・ASPHODEL

イギリス人写真家James Mollisonと、モロッコ出身のYoriyas(Yassine Alaoui Ismaili)による展示。それぞれ別の会場で開催されていました。

Mollisonの代表作「Where Children Sleep」は、世界中の子どもたちの寝室を通じて生活環境の差を映し出す作品です。京都芸術センターという空間で見ると、それぞれの部屋の写真が国境を越えた問いかけとして響いてきます。ASPHODELでのYoriyasの展示は、カサブランカの街のリズムとエネルギーを躍動感あふれる構図で切り取ったストリートフォトグラフィー。まったく対照的なふたりの作品を同日に見ることで、「子どもたちの世界」と「都市の世界」がともに鮮明になりました。

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Lucien Clergue・Yoriyas|嶋臺ギャラリー・出町桝形商店街

フランスの伝説的写真家Lucien Clergue(1934-2014)と、Yoriyas再びの展示です。

嶋臺ギャラリーで見たClergueの「ジプシー・テンポ」は、南フランスの光と影を巧みに使ったヌードやサーカスの演者を捉えた作品群。ピカソとの親交でも知られる彼の写真は、没後10年を経てもその詩的な美しさが衰えていません。出町桝形商店街でのYoriyasの「KIF KIF KYOTO」は対照的に活気に満ちていました。アーケードという日常の生活空間の中に写真が置かれ、買い物客と作品が自然に共存する光景は、KYOTOGRAPHIEらしい体験のひとつでした。

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川内倫子・潮田登久子・川田喜久治|京セラ美術館

日本の写真史を代表する3名が京セラ美術館に集結した、2024年でもっとも贅沢な展示のひとつでした。

川内倫子「Cui Cui + as it is」は、自身の家族を長期にわたって撮り続けたシリーズと、日常の微細な瞬間を詩的に捉えた作品。淡い光と柔らかな色調が穏やかな時間を運んできます。潮田登久子「冷蔵庫 + マイハズバンド」は、冷蔵庫の中身という身近な場所から家族の文化と生活をすくい上げる視点が独特でした。川田喜久治「見えない地図」は、広島・長崎の被爆地を含む風景を深いモノクロで記録した「地図」シリーズが核心。重いテーマを詩的に、哲学的に問い直す川田の眼差しは、他のふたりとまったく異なる温度を持ちながら、同じ空間に不思議な共鳴を生んでいました。

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2024年を振り返って

初めてのKYOTOGRAPHIEで最も驚いたのは、会場の多様さでした。美術館、寺院、老舗、城、商店街、印刷工場の跡地。それぞれの場所が持つ時間と記憶が写真に絡みつき、どちらをもより豊かに見せてくれます。

2024年のテーマ「LEGACY(遺産)」は、ひとつひとつの会場の歴史そのものにも重なっていました。作品だけでなく、場所の歴史ごと受け取るような体験。これがKYOTOGRAPHIEの核心なのだと、この年に気づきました。翌2025年も、また開幕初日に京都へ向かいました。

展示一覧

アーティスト展示タイトル会場
ヴィヴィアン・サッセンPHOSPHOR: Art & Fashion 1990-2023京都新聞旧印刷工場 地下1F
クラウディア・アンドゥハル影の中の光KYOTOGRAPHIE 2024会場
ティエリー・アルドゥアン(二条城展示)二条城 二の丸御殿 台所・御清所
Birdhead(誉田屋展示)誉田屋源兵衛 竹院の間・黒蔵
Jaisingh Nageswaran(インド日常写真)KYOTOGRAPHIE 2024会場
イランの市民と写真家たち(イラン写真展)KYOTOGRAPHIE 2024会場
James MollisonWhere Children Sleep ほか京都芸術センター
YoriyasCasablanca Not the Movie ほかASPHODEL・出町桝形商店街
Lucien Clergueジプシー・テンポ嶋臺ギャラリー
川内倫子Cui Cui + as it is京セラ美術館
潮田登久子冷蔵庫 + マイハズバンド京セラ美術館
川田喜久治見えない地図京セラ美術館

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