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はじめに|開幕初日、“京都の鼓動”に触れた日

2025年4月12日、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025が開幕しました。

その初日、私は京都新聞ビルを訪れ、**フランス出身のアーティストJRによる「クロニクル京都 2024」**の展示を目にしました。

朝の光が差し込む1階ロビー、少し肌寒く静かな地下の印刷工場跡。訪れる人々の熱気と、作品から立ち上る「声」に包まれたこの場所には、まだ誰にも染まっていない“はじまりの空気”が漂っていました。

展示を見終えたあとも、胸の奥にじんわりと残るものがありました。それは、都市の記憶を“人の顔”で刻むという、JRのアートの本質に触れた感覚だったのかもしれません。

JRとは?|都市を“顔”で語る、社会派ストリートアーティスト

**JR(ジェイアール)**は、1983年フランス・パリ生まれの写真家/ビジュアルアーティストです。正体不明のまま活動を始め、最初はパリのストリートで撮った写真を、ビルの壁などに貼る“ゲリラアート”で知られるようになりました。

彼の作品は常に「人の顔」から始まります。巨大なポートレート写真を都市空間に掲げ、その表情から社会問題や都市の歴史、無名の人々の存在感を私たちに問いかけてきました。

代表作には、

  • エルサレムとパレスチナの市民の顔を並べた《Face 2 Face》
  • 世界各地の女性たちの表情を掲げた《Women Are Heroes》
  • ルーヴル美術館のピラミッドを“消して”みせた《Secret of the Great Pyramid》

など、写真 × 建築 × 社会を融合させた、壮大で詩的な作品群があります。

彼は2011年、TED Prizeを受賞。世界中の人々を巻き込み、街を美術館に変えてきたアーティストです。

展示の魅力|開幕初日に感じた“生まれたての京都の肖像”

地下1階|印刷機の残る空間に立ち現れる“人の声”

開幕初日の朝、地下空間へ降りると、空気の匂いがまだ“展示空間として息をし始めたばかり”のように感じられました。巨大な鉄骨足場の上に並ぶポートレートたちは、まるでまだ目を覚ましたばかりのように、ゆっくりと私に語りかけてきました。

各作品に添えられた言葉の数々は、アートというより対話。市井の人々が語る夢や日常、過去の記憶が、会場の沈黙とともに心に沁みてきました。

1階ロビー|新聞紙が語る505通りの京都

1階へ戻ると、新聞用紙に刷られた市民のポートレートが壁一面にずらりと広がっていました。背景にはその日(=撮影当日)の京都新聞が印刷されており、展示空間全体が“都市の記録媒体”のように感じられます。

**「展示初日にこれを見られたことがうれしい」**と感じたのは、そこに写る誰もが、まだ展示されたばかりの姿で「今日を迎えていた」からかもしれません。

まとめ|開幕初日だからこそ感じた、“街と人の記憶”の息吹

JRの「クロニクル京都 2024」は、ただの展示ではありません。開幕初日の空気と共に体感したこのプロジェクトは、京都の街に宿る無数の物語と、アートとしての時間の重なりを同時に体感させてくれました。

観光地ではない、“暮らしの京都”
非日常ではない、“人の営みとしての京都”

それをアートの力でそっとすくい上げたこの展示は、今しか出会えない京都のかたちを教えてくれます。

KYOTOGRAPHIEを訪れる方には、ぜひこの展示を最初に体験してほしい。都市と人を結ぶアートが、ここには確かにあります。

展示情報(JR「クロニクル京都 2024」)

  • 会期:2025年4月12日(土)〜5月11日(日)
  • 会場:京都新聞ビル 地下1F(旧印刷工場跡) & 1Fロビー
  • 開館時間:平日 10:00〜18:00/土日祝 10:00〜19:00(最終入場30分前)
  • 休館日:4月15日、20日、28日、5月7日
  • 料金:KYOTOGRAPHIEパスポート対象/一部無料チケットあり(事前予約制)

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