瀧本幹也 写真展「LUMIÈRE / PRIÈRE」-光と祈りの空間で
2024年12月5日から15日まで、東京・代官山ヒルサイドフォーラムで開催された瀧本幹也氏の写真展「LUMIÈRE / PRIÈRE」。本展は、新作写真集『LUMIÈRE』と『PRIÈRE』の刊行を記念し、瀧本氏が紡ぎ出した独自の世界観を多層的に体験できる内容となりました。
光と祈りをテーマにした二つのシリーズ
本展の中心に据えられたのは、瀧本氏が長い時間をかけて制作した2つのシリーズ「LUMIÈRE」と「PRIÈRE」です。それぞれが異なるテーマと視点を持ちながらも、どちらも自然や時間、人間の営みを深く見つめています。
「LUMIÈRE(光)」
このシリーズは、コロナ禍で撮影された身近な草花をテーマとしています。特に野に咲く菜の花を見上げた瞬間の感動がきっかけとなり、光と影が織り成す美しい小宇宙が写真に捉えられています。これらの作品は、私たちが普段気づかない自然の豊かさや光の奇跡を新たに教えてくれます。
「PRIÈRE(祈り)」
一方、「PRIÈRE」は、日本各地の寺社を巡り、その静寂と祈りの時間を写し取ったシリーズです。観光客がいなくなり、本来の姿を取り戻した寺院。その静けさの中で、歴史や祈りの連なりが感じられる作品群となっています。3年間で約200の寺社を訪れた瀧本氏の目線が、祈りの神聖さを写真を通して伝えます。
天井写真と新たな体験を提供するインスタレーション
本展では、写真作品だけでなく、展示手法やインスタレーション作品が来場者を魅了しました。
天井に展示された写真作品
特に印象的なのは、天井に写真作品を取り付けた独自の展示方法です。来場者は床に横たわり、写真を見上げながら鑑賞するというスタイルが採用されました。これは、瀧本氏が菜の花を見上げて撮影した視点を体験できるよう工夫されたもので、観る者に新たな視覚体験を提供しました。
「雪の庭図 天井枯山水 SNOW MOUNTAIN」
このインスタレーションは、雪山をモチーフにした空間演出が特徴です。天井に配置された写真作品との組み合わせで、来場者に禅的な静寂と自然の力強さを感じさせる独特の体験を生み出しました。
「透過と反射 枯山水 SURFACE」
もう一つの注目作は、枯山水を現代的に再解釈したインスタレーションです。ガラスを庭石に見立て、覗き込むと火山活動を記録した映像「FLAME」が映し出される仕掛けが施されています。また、床面には海をテーマにした映像「SURFACE」が投影され、静けさと自然のダイナミズムが融合した空間が作り出されていました。
最終日に感じた会場の熱気
私が訪れたのは最終日。多くの来場者が詰めかけ、会場全体が熱気に包まれていました。床に横たわりながら写真をじっくり鑑賞する人々や、「透過と反射 枯山水」の前でガラス越しの光景を観察する人々。それぞれが作品に没頭し、心動かされている様子が印象的でした。この活気は、作品そのものが持つ力を一層引き立てていたように感じられます。
光と祈りが示す写真の可能性
「LUMIÈRE / PRIÈRE」は、瀧本幹也氏が提示する新たな視点と写真の可能性を探る展示でした。光と祈りという普遍的なテーマを軸に、自然の美や静寂の中に宿る神聖さを感じさせる内容は、来場者に深い感銘を与えました。
特に、写真を天井に展示する手法やインスタレーション作品を組み合わせた構成は、従来の写真展の枠を超えるものでした。この展示が終わった後も、瀧本氏の作品は訪れた人々の心に響き続け、日々の生活の中で新たな気づきを与えてくれることでしょう。
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