Article list

序章:ファンタジーの力とは

「ファンタジーの力」とは、現実を超えた想像力が生み出す新たな世界観のこと。この展覧会では、日本画の巨匠・川端龍子と、高橋龍太郎コレクションを代表する現代アーティストたちの作品を通じて、ファンタジーが持つ魅力を探ります。過去と現在が交差し、異なる時代のアートが響き合う展示構成になっているのが特徴です。

本展は、2021年の「川端龍子vs.高橋龍太郎コレクション」に続く第2弾として、2024年12月7日から2025年3月2日まで大田区立龍子記念館で開催されます。

第1章:旅立ち 〜時を超える幻想〜

時空を超え、どこへでも旅できるのがファンタジーの魅力。川端龍子の《花摘童子》や、《母なる大地》の力強い筆致と、現代アーティストの作品が交差し、見る者を幻想の旅へと誘います。特に、目【me】の《アクリルガス T-1919》や宮永愛子の《Suitcase-key》など、時を超えて異なる場所へと導く作品が並び、鑑賞者自身が旅をするような感覚を味わえる構成になっています。

第2章:そこにいるのは誰? 〜幻想的な存在たち〜

この章では、ファンタジーに登場する不可思議な存在や、異世界の住人たちを描いた作品が集められています。例えば、杉戸洋の《quick draw man》や堂本右美の《Kanashi-15》は、抽象と具象の間を漂うような表現が特徴。夢と現実の狭間に生きる存在たちが、鑑賞者に語りかけるように展示されています。

第3章:土と光、風の物語 〜自然と幻想の融合〜

自然が生み出す幻想的な風景に焦点を当てた展示です。伊勢周平の《日光》は、まばゆい光を描きながらもどこか神秘的な雰囲気を持ち、川端龍子の《日々日影》と呼応するように配置されています。また、李禹煥の《Correspondance》は、シンプルな構成ながらも風や光の移ろいを感じさせ、自然が持つ神秘的な力を表現しています。

第4章:夢の領域 〜眠ること、見ること、創造すること〜

夢の世界はファンタジーの核心のひとつ。本章では、青山悟の《Ring》や、川端龍子の《夢》など、眠りと幻想の関係を描いた作品が並びます。特に、安藤正子の《スフィンクス》は、まるで夢の中に迷い込んだかのような感覚を呼び起こし、幻想の世界をより一層深く体感できる作品となっています。

第5章:海の物語 〜未知の世界への憧れ〜

海は未知の世界への扉であり、多くのファンタジー作品に登場するテーマです。草間彌生の《海底》、西村陽平の《辞書》など、異なる視点から海を捉えた作品が展示されています。さらに、川端龍子の《龍巻》は、海と空をつなぐダイナミックな表現が魅力的で、ファンタジーの中にある壮大なスケール感を体現しています。

第6章:日々、物語はつづく 〜見慣れた光景、大切なもの〜

最後の章では、日常の中に潜むファンタジーを探ります。小林孝亘の《テレビジョン》や《Rainy Day》は、どこにでもありそうな風景の中に幻想的な要素を見出し、ファンタジーは決して遠いものではなく、私たちのすぐそばにあることを示唆しています。日常と非日常の狭間にある物語の魅力を感じることができる展示です。

感想

私は名和晃平の作品が好きで、これまでにもさまざまな展示会を訪れてきました。今回の展覧会も、名和晃平の作品をメインの目的として鑑賞しましたが、期待を超える素晴らしい内容でした。特に、《PixCellシリーズ》は、ファンタジーと現実の狭間を見事に表現しており、まるで異世界に迷い込んだかのような感覚を覚えました。

また、富永愛子や草間彌生、奈良美智の作品も非常に魅力的で、それぞれが異なる視点から幻想の世界を描いていました。加えて、展示全体の構成も素晴らしく、作品同士の関係性が考え抜かれていることが伝わってきました。全体を通じて、幻想の力を存分に感じられる展覧会であり、訪れて本当に良かったと感じました。

開催情報

  • 会場:大田区立龍子記念館
  • 会期:2024年12月7日(土)〜2025年3月2日(日)
  • 主催:大田区文化振興協会
  • 協力:高橋龍太郎コレクション、医療法人社団ところの会
  • 開館時間:9:00~16:30(入館は閉館の30分前まで)
  • 休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、その翌日休館)、年末年始(12月29日~1月3日)
  • 観覧料:一般 1000円 / 中学生以下 500円(65歳以上、未就学児、障がい者は無料)

本展は、川端龍子の日本画と現代アートの対話を通じて、ファンタジーが持つ可能性を探る試みです。夢や想像力が私たちの世界を豊かにすることを実感させる展示構成となっており、鑑賞者それぞれが自分自身の「ファンタジーの力」を再認識できる機会となるでしょう。

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。